「算数までは得意だったのに、数学でxやyが出てきた途端、わからなくなった…」
「文字式って、一体なんのために勉強するの?」
中学生になって数学の授業で「文字式」が登場し、急に苦手意識を持ってしまう人は少なくありません。
でも、安心してください。文字式は、決して難しいものではありません。
実は、わからない数量を「一旦、仮の名前で置いておく」ための、とても便利な道具なんです。文字式を使うことで、たくさんの場合に当てはまる法則を一つの式で表す「一般化」ができるようになります。
この記事では、文字式でつまずいてしまう原因から、身近な例を使った考え方のコツ、そして具体的な計算ルールの攻略法まで、3つのステップで丁寧に解説していきます。
この記事を読み終える頃には、文字式への苦手意識がなくなり、「なるほど、そういうことか!」とスッキリ理解できるようになるはずです。
なぜ文字式でつまずくの?算数と数学の大きな違い
多くの人が文字式でつまずく最初の原因は、小学校で習った「算数」と、中学校から始まる「数学」の根本的な考え方の違いに戸惑うからです。
一言でいうと、算数は「答えが1つに決まる問題」を解くのがメインでしたが、数学は「文字を使って関係性を一般化して表す」という、より抽象的な考え方が求められます。
この違いを、宝探しゲームに例えてみましょう。
算数は、答えという宝の場所がハッキリしている「宝探し」です。「リンゴが5個あり、3個食べました。残りは何個?」という問題では、「2個」という唯一の宝(答え)を見つければゴールでした。
一方、数学の文字式は、答えが状況によって変わる「宝のありかを示す地図作り」に似ています。「1個100円のリンゴをx個買いました。代金はいくら?」という問題では、xにどんな数字が入るかによって、答えが変わりますよね。ここで求められるのは「100x円」という、個数と代金の関係性を表す地図(式)そのものなのです。
このように、具体的な数字だけを扱っていた算数から、文字という抽象的な記号を使って「関係性」や「ルール」そのものを考える数学へのステップアップが、多くの人にとって最初の壁になるのです。
算数 | 数学(文字式) | |
---|---|---|
目的 | 決まった答えを見つける(宝探し) | 関係性や法則を式で表す(地図作り) |
扱うもの | 具体的な数字(5, 100など) | 文字(x, aなど)を含む抽象的な記号 |
考え方 | 1+1=2のように、答えは常に1つ | xの値によって答えが変わり、法則を一般化する |
例題 | 100円のパンと80円のジュースを買うと合計180円 | 100円のパンx個と80円のジュースy本を買うと合計100x+80y円 |
文字式が好きになる!身近な例で考えよう
文字式の便利さを知る一番の近道は、自分の身の回りにあることで考えてみることです。
「xやyなんて謎の記号」と思わずに、「まだ決まっていない数を入れるための箱」だとイメージしてみましょう。
① コンビニでの買い物で考えてみよう
例えば、あなたがコンビニでお昼ご飯を買うとします。
1個150円のおにぎりと、1本120円のお茶を買うことにしました。
この時、おにぎりを何個買うか、お茶を何本買うか、まだ決めていないとします。
ここでおにぎりの個数をx個、お茶の本数をy本と「仮に」決めておくのです。
そうすると、合計金額は150x + 120y
(円)という式で表せます。
この式さえ作っておけば、あとで「やっぱりおにぎりは2個にしよう(x=2)」「お茶は1本でいいや(y=1)」と決まった時に、xとyに数字を当てはめるだけで、すぐに合計金額を計算できます。
150 × 2 + 120 × 1 = 420円、というようにです。
このように、状況に応じて変化する数を文字で置いておくことで、いちいち文章で考えなくても、関係性がスッキリ整理できます。
② スマホの料金プランでイメージする
もっと身近な例として、スマートフォンの料金プランがあります。
例えば、あなたのスマホプランが「基本料金2,000円で、データ通信は1GBあたり追加で500円」だとします。
この月、あなたが何GBのデータ通信を使ったかをx
GBとすると、その月のスマホ代は2000 + 500x
(円)と表すことができますね。
もし、あなたがその月に3GB使ったなら、xに3を代入して2000 + 500 × 3 = 3500円。
もし、5GB使ったなら、xに5を代入して2000 + 500 × 5 = 4500円となります。
このように、文字式は私たちの生活に深く関わる「料金シミュレーション」などでも大活躍している考え方なのです。
苦手を得意に!文字式の計算ルールを攻略する3ステップ
文字式の考え方に慣れてきたら、次は計算ルールをマスターしましょう。
ルールは一見すると複雑に感じるかもしれませんが、一つひとつはとてもシンプルです。
ここでは、絶対に押さえたいルールを3つのステップに分けて解説します。
ステップ1:まずは基本の「書き方ルール」を覚えよう
文字式には、式をスッキリ見やすくするための、世界共通の「書き方のルール」があります。
これは、英語を学ぶ時にアルファベットを覚えるのと同じくらい基本的なことなので、最初にしっかり覚えてしまいましょう。
- ルール1:かけ算の記号
×
は省略する3 × a
→3a
a × b
→ab
- ルール2:数字と文字のかけ算では、数字を前に書く
a × 3
→3a
- ルール3:文字が複数ある場合は、アルファベット順に並べる
c × b × a
→abc
- 【例外】 同じ文字のかけ算は、
a × a × b
→a²b
のように指数を使います。また、xy
のように慣習的に順番が決まっているものもあります。
- ルール4:
1
は省略する1 × a
→a
(1a
とは書かない)-1 × a
→-a
- ルール5:わり算の記号
÷
は使わず、分数の形で書くa ÷ 3
→a/3
(a + b) ÷ 3
→(a+b)/3
これらのルールは、文字式の世界における「言葉づかい」のようなものです。
最初は戸惑うかもしれませんが、問題を解いているうちに自然と身についていきます。
ステップ2:「項」と「係数」で式を分解しよう
次に、式をパーツごとに見る練習をします。
例えば、3a – 7b – 5という式があったとします。
この式は、+や-の符号の前で区切ることができ、3a、-7b、-5の3つのパーツに分けられます。
このひとつひとつのパーツを「項(こう)」と呼びます。
そして、3a
の3
や、-7b
の-7
のように、文字についている数字の部分を「係数(けいすう)」と言います。係数は、必ず符号も含めて考えるのがポイントです。3a
の係数は3
、-7b
の係数は-7
となります。
式をこのように「項」という部品の集まりとして捉えることが、次のステップである「同類項」をまとめる作業で非常に重要になってきます。
ステップ3:分配法則と同類項をマスターしよう
最後に、文字式計算の山場である「分配法則」と「同類項」をまとめます。
分配法則は、カッコを外すときの計算ルールです。
-3(a + 4)という式があった場合、カッコの外にある-3を、カッコの中にあるaと+4の両方にかけ算します。
(-3) × a + (-3) × 4となり、答えは-3a – 12となります。負の数を含む計算に注意しましょう。
同類項をまとめるとは、文字の部分が全く同じ項(仲間)を、足し算や引き算で整理することです。
5a + 2b – 3a – bという式を例に見てみましょう。
この中で仲間を探すと、aがついている5aと-3a、そしてbがついている+2bと-bが見つかります。
仲間同士で係数を計算すると、
5a - 3a = (5 - 3)a = 2a
+2b - b = (+2 - 1)b = b
(-bは、-1×bのことなので係数は-1です)
となり、式全体を2a + bとスッキリさせることができます。
文字が違うaとbは、これ以上計算できません。リンゴとミカンを一緒に数えられないのと同じですね。
まとめ:文字式は未来の自分を助ける「魔法の道具」
今回は、中学生が数学でつまずきやすい「文字式」について、苦手意識を克服するための考え方や具体的な攻略法を解説しました。
- 文字式でつまずくのは、算数と考え方が違うから。
- 身近な買い物やスマホ代に置き換えると、文字式の便利さがわかる。
- 計算は「書き方ルール」「項と係数」「同類項」の3ステップでマスターできる。
文字式は、一見するとただの面倒な記号に見えるかもしれません。
しかし、その本質は、複雑な物事の関係性をシンプルに整理し、問題を解決へと導くための強力な「思考の道具」です。
この考え方は、高校数学はもちろん、将来プログラミングを学んだり、仕事でデータを分析したり、論理的に物事を考えたりする上で、必ずあなたの助けになります。
まずは「xは、まだ決まっていない数を入れる箱」というイメージを持って、身の回りのことを文字式で表す遊びから始めてみてください。
きっと、数学の世界が今までよりもずっと面白く、身近なものに感じられるはずです。