CircuitPython入門ガイド!初心者向けに違いや始め方をやさしく解説

CircuitPython入門ガイド!初心者向けに違いや始め方をやさしく解説

「電子工作に挑戦したいけど、プログラミングが難しそう…」

「Arduinoを触ってみたけど、C言語で挫折してしまった…」

そんなふうに感じているあなたにこそ知ってほしいのが「CircuitPython(サーキットパイソン)」です。

CircuitPythonは、私たちが普段Web開発などで使うプログラミング言語「Python」をベースにしているため、非常に分かりやすく、直感的にマイコンを動かせます。

この記事では、電子工作の新しいスタンダードになりつつあるCircuitPythonの魅力から、よく比較されるMicroPythonやArduinoとの違い、そして具体的な始め方まで、初心者の方にも理解できるよう丁寧に解説していきます。

この記事を読めば、あなたもきっとCircuitPythonで電子工作を始めたくなるはずです。

目次

CircuitPythonとは?初心者にも優しいマイコン用プログラミング言語

CircuitPythonは、電子部品や開発ボードを販売している米国のAdafruit社が、教育向けに開発したプログラミング言語です。

オープンソースの「MicroPython」という言語から派生(フォーク)したもの(※)で、マイコン(マイクロコントローラ)と呼ばれる小さなコンピュータを、Pythonの文法で手軽に動かせるのが最大の特長といえるでしょう。
※フォーク:公開されているソフトウェアのソースコードをコピーして、別の目的のために独自の開発を進めること。

これまでの電子工作では、Arduinoに代表されるようにC/C++言語を使うのが一般的でした。しかし、C言語は初心者にとって少し複雑で、環境構築の段階でつまずいてしまうことも少なくありません。

その点、CircuitPythonはシンプルで読みやすいPythonがベース。

さらに、プログラムの書き換えが非常に簡単な仕組みになっているため、初心者の方でも試行錯誤しながら楽しく学習を進められます。

まるでPC上のファイルを編集するように、マイコンボード上のプログラム(code.py)を書き換えて保存するだけで、すぐに動作が反映されるのです。この手軽さが、世界中の多くの開発者や教育者から支持されています。

CircuitPythonとMicroPythonの違いは?どっちを選ぶべき?

CircuitPythonの元になった「MicroPython」という言語も存在します。どちらもPythonライクにマイコンを扱える点は同じですが、いくつかの重要な違いがあります。

どちらを選ぶべきか迷っている方のために、それぞれの特徴を比較表にまとめてみました。

特徴CircuitPythonMicroPython
開発元AdafruitDamien George氏が開発、現在はコミュニティが維持
主なターゲット初心者、教育者経験豊富な開発者、ホビイスト
設計思想使いやすさ、一貫性を重視柔軟性、パフォーマンスを重視
対応ボード数600種類以上(Adafruit製品が中心)非常に多い
ライブラリAdafruitが統一的に提供(500以上)コミュニティベースで多様
更新方法ドラッグ&ドロップで簡単ツール(esptoolなど)が必要な場合も
こんな人におすすめとにかく手軽に始めたい初心者より多くのボードを使いたい中上級者

簡単に言うと、CircuitPythonは「初心者への優しさ」を最優先に設計されています。 Adafruit社による手厚いサポートと、統一された豊富なライブラリが魅力です。対応ボードは厳選されているとはいえ、その数は2025年3月時点で600種類を突破しており、急速に拡大しています。

一方、MicroPythonは「自由度の高さ」が特徴です。 もともとDamien George氏によって作られ、現在は大きなコミュニティと財団によって維持されています。非常に多くのマイコンボードに対応しており、よりハードウェアに近い細かな制御が可能です。

もしあなたが電子工作の初心者なら、まずはCircuitPythonから始めてみるのが断然おすすめです。

参考:600 CircuitPython Boards! #CircuitPython

CircuitPythonとArduino(C++)の比較!それぞれのメリット・デメリット

電子工作の王道といえば、やはり「Arduino」を思い浮かべる方も多いでしょう。ArduinoはC/C++言語で開発を行いますが、CircuitPythonとはどのような違いがあるのでしょうか。

こちらも、それぞれのメリット・デメリットを比較してみましょう。

特徴CircuitPython (Python)Arduino (C/C++)
言語シンプルで習得しやすい実行速度が速い
開発のしやすさ非常に手軽(テキストエディタでOK)専用IDEでのコンパイル・書き込みが必要
試行錯誤得意(コード保存で即実行)少し手間がかかる(コンパイル型)
ライブラリAdafruitが管理し使いやすい非常に豊富だが玉石混交な面も
情報量増加中圧倒的に多い
実行速度C/C++に比べると遅い高速

CircuitPythonの最大のメリットは、開発の手軽さと学習のしやすさです。 プログラムは内部でバイトコードにコンパイルされてから実行されますが、開発者はその過程を意識する必要がありません。ファイルを保存するだけで即座に動くため、アイデアをすぐに試せるのが嬉しいポイントです。

対してArduinoの強みは、実行速度と情報量の多さにあります。

C/C++はコンピュータが理解しやすい言語に近いため、処理速度が非常に速いです。また、歴史が長い分、Web上には膨大な数の作例やトラブルシューティング情報が見つかります。

どちらも優れたプラットフォームですが、「難しいことは抜きにして、まずはアイデアを形にしてみたい」という方には、CircuitPythonが最適な選択肢になるでしょう。

CircuitPythonで何ができる?LチカからIoTデバイス開発まで

CircuitPythonを使えば、本当にさまざまな電子工作が可能です。

一番シンプルな例は、電子工作の入門としておなじみの「Lチカ」(LEDをチカチカ点滅させること)です。

しかし、CircuitPythonのポテンシャルはそれだけにとどまりません。

例えば、以下のようなデバイスを比較的簡単に自作できます。

  • センサーを使った環境測定器
    温度センサーや湿度センサー、CO2センサーなどを接続し、部屋の環境を測定してディスプレイに表示する。
  • 自分だけのオリジナルキーボード
    特定のキー入力やショートカットを登録できる、自分専用の左手デバイスやマクロキーパッドを作成する。
  • インターネットと連携するIoTデバイス
    Wi-Fi機能付きのマイコンボードを使い、天気予報を取得してLEDの色で知らせたり、ボタンを押したら特定のWebサービスに通知を送ったりする。
  • モーターやサーボを制御するロボット
    モータードライバを介してモーターを動かし、簡単なロボットや動くおもちゃを作る。

Adafruitが提供する500を超える豊富なライブラリを使えば、複雑なセンサーやデバイスも数行のコードで制御できてしまいます。

あなたのアイデア次第で、作れるものの可能性は無限に広がっていくのです。

CircuitPythonの始め方【3ステップで簡単解説】

「なんだか面白そう!」と思っていただけたでしょうか。

ここからは、実際にCircuitPythonを始めるための具体的な手順を3つのステップで解説します。驚くほど簡単なので、ぜひ気軽にチャレンジしてみてください。

ステップ1:対応マイコンボードを用意する

まずは、CircuitPythonが動作するマイコンボードを手に入れましょう。

対応ボード数は急速に増えており、2021年に200種類、2023年には400種類、そして2025年には600種類を突破しました。

その中でも、初心者の方には以下のボードが特におすすめです。

  • Raspberry Pi Pico W
    非常に安価で高性能、さらにWi-Fi機能も搭載しています。入手しやすく情報も多いため最初の1台に最適です。(※価格は供給状況により変動します)
  • Adafruit Featherシリーズ
    Adafruit社が出している定番シリーズです。さまざまなCPUや機能を搭載したモデルがあり、拡張ボードも豊富なので、作りたいものに合わせて選べます。

これらのボードは、国内のAmazonや秋月電子通商、スイッチサイエンスといった通販サイトで購入可能です。

ステップ2:CircuitPythonをインストールする

ボードが手元に届いたら、CircuitPythonのファームウェア(マイコンを動かすための基本ソフト)をインストールします。

これも非常に簡単です。

  1. CircuitPython公式サイトにアクセスします。
  2. 検索窓に、あなたの持っているボード名(例: Raspberry Pi Pico W)を入力して選択します。
  3. 表示されたページの「DOWNLOAD .UF2 NOW」ボタンを押し、ファイルをダウンロードします。
  4. ボード上の「BOOTSEL」などのボタンを押しながら、PCにUSBケーブルで接続します。
  5. PC上に「RPI-RP2」といった名前のUSBドライブが表示されます。
  6. そのドライブに、先ほどダウンロードした.uf2ファイルをドラッグ&ドロップします。

これだけでインストールは完了です。コピーが終わるとボードは自動的に再起動し、今度は「CIRCUITPY」という名前のドライブとして認識されます。

ステップ3:開発環境を準備してコードを書く

CircuitPythonには、Arduino IDEのような特定の専用開発環境は必須ではありません。

開発には、以下のようなテキストエディタやツールがよく使われています。

  • VS Code + CircuitPython拡張機能
    高機能でカスタマイズ性が高く、多くの開発者に人気の組み合わせです。コード補完やシリアルモニタなどが統合され、快適に開発できます。
  • Web版エディタ (code.circuitpython.org)
    インストール不要で、ブラウザから直接コードを編集できる手軽なエディタです。Chromebookなどでも開発を始められます。
  • Mu Editor
    Adafruitが公式に推奨している、初心者向けのシンプルなエディタです。プロット機能などもあり、教育用途にも適しています。
  • Thonny
    こちらも初心者向けのPython用エディタで、CircuitPythonの開発にもよく利用されます。

準備ができたら、「CIRCUITPY」ドライブの中にcode.pyという名前でファイルを作成し、以下のコードを書いて保存してみましょう。これは、多くのボードに搭載されている内蔵LEDを1秒ごとに点滅させるプログラムです。

import time
import board
import digitalio

# 内蔵LEDを準備
led = digitalio.DigitalInOut(board.LED)
led.direction = digitalio.Direction.OUTPUT

# 無限ループ
while True:
    led.value = True   # LEDを点灯
    time.sleep(1)      # 1秒待つ
    led.value = False  # LEDを消灯
    time.sleep(1)      # 1秒待つ

ファイルを保存した瞬間にプログラムが自動で実行され、ボード上のLEDがチカチカと点滅を始めるはずです。

これで、あなたもCircuitPython開発者の一員です!

まとめ:CircuitPythonで電子工作をもっと手軽に楽しもう

この記事では、初心者向けのマイコンプログラミング言語「CircuitPython」について、その魅力や始め方を解説しました。

  • Pythonベースでシンプル、初心者でも学びやすい
  • プログラムの更新がドラッグ&ドロップで超簡単
  • Adafruitによる500以上の豊富なライブラリで、複雑な部品も手軽に扱える

CircuitPythonは、これまで電子工作のハードルとなっていた部分を丁寧に取り除き、「アイデアをすぐに形にする楽しさ」を誰にでも提供してくれる素晴らしいプラットフォームです。

対応ボード数は今も増え続けており、コミュニティも活発に成長しています。

まずはRaspberry Pi Picoのような手頃なボードで、Lチカから始めてみませんか?

きっと、ものづくりの新しい世界の扉が開くはずです。

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