「この画像の一部分だけ切り抜きたい」「PDFにサインして返信しないと…」
そんな時、わざわざ高価な画像編集ソフトやPDF専門アプリを契約していませんか? 実は、Macに標準で搭載されている「プレビュー」アプリを使えば、多くの編集作業が無料で、しかも驚くほど簡単に行えます。
この記事では、Macユーザーなら誰でも使えるプレビューアプリの便利な機能の中から、特に利用頻度の高い画像とPDFの編集テクニックを厳選して解説します。この記事を読めば、もう簡単な編集作業に時間やお金をかける必要はなくなりますよ。
Macのプレビューアプリとは?基本機能とメリット
プレビューアプリは、その名の通り画像やPDFファイルを開いて閲覧するためのアプリですが、実はそれだけではありません。ファイルの内容を書き換える「マークアップ」という強力な編集機能が備わっています。
普段、画像やPDFをダブルクリックした時に自動で立ち上がるのがこのアプリなので、多くの人が無意識のうちに使っているはずです。特別なソフトをインストールする必要がなく、Macを手にしたその日から誰でも使えるのが最大の魅力でしょう。
プレビューアプリを使うメリットは以下の通りです。
- 完全無料: Macに標準搭載なので、追加費用は一切かかりません。
- インストール不要: 最初から入っているため、探してインストールする手間が不要です。
- 直感的な操作: シンプルなインターフェースで、専門知識がなくても直感的に操作できます。
- 軽快な動作: 高機能な専門ソフトに比べて動作が軽く、サッと起動してすぐに作業を始められます。
「たまにしか編集しないから、ソフトにお金をかけたくない」「急いで資料を修正して送りたい」といったニーズに完璧に応えてくれる、まさにMacユーザーのためのお助けツールと言えるでしょう。
【画像編】プレビューアプリでできる主な編集テクニック
まずは、画像編集でよく使う便利な機能から見ていきましょう。マークアップツールバーが表示されていない場合は、メニューバーの「表示」から「マークアップツールバーを表示」を選択するか、ペンのアイコンをクリックしてください。
サイズ変更とファイル形式の変換
ブログやメールで使う画像のファイルサイズが大きすぎて、アップロードに時間がかかった経験はありませんか。プレビューアプリなら、画像のサイズ(解像度)を簡単に変更できます。
やり方は、メニューバーの「ツール」から「サイズを調整」を選択するだけ。「幅」や「高さ」のピクセル数を変更すれば、それに合わせてファイルサイズも自動で調整されます。解像度の項目では、印刷に適した「300ピクセル/インチ」などを選ぶことも可能です。Web用としては従来「72ピクセル/インチ」が一般的でしたが、近年はRetinaディスプレイのような高解像度な画面が増えているため、一概には言えません。画像の用途や表示させたいサイズに合わせて調整するのが良いでしょう。
また、ファイル形式の変換も簡単に行えます。「ファイル」メニューから「書き出す」を選び、フォーマットの項目でJPEG、PNG、HEIC、TIFFなど、目的に合った形式を選択して保存しましょう。例えば、背景を透明にしたい場合はPNG形式で保存するなど、用途に応じた使い分けができます。
トリミング(切り抜き)と回転
画像の中の特定の部分だけを使いたい時に便利なのが、トリミング(切り抜き)機能です。
まず、マークアップツールバー左端の選択ツール(点線の四角形)を選び、画像の上でドラッグして残したい範囲を指定します。範囲を指定したら、ツールバーに表示される「切り取り」ボタンをクリックするか、ショートカットキー ⌘(command)+ K
を押せば、選択範囲外が切り取られて完了です。人物の写真で背景を調整したり、スクリーンショットの必要な部分だけを抜き出したりする際に非常に役立ちます。
画像の向きが違っている場合も問題ありません。ツールバーにある回転ボタンをクリックするだけで、90度ずつ画像を回転させることができます。わざわざ他のアプリを立ち上げるまでもない、ちょっとした修正がすぐにできるのは嬉しいポイントです。
テキスト挿入や図形の追加
操作マニュアルの作成や、画像の特定箇所を強調したい時に、文字や図形を追加したい場面は多いでしょう。プレビューアプリでは、こうした注釈の追加も得意です。
マークアップツールバーの「A」アイコンをクリックすれば、画像内にテキストボックスが追加され、自由に文字を入力できます。フォントの種類やサイズ、色もツールバーから変更可能です。
また、「シェイプ」ツールを使えば、四角形や円、吹き出しといった図形を簡単に追加できます。特に矢印は、指し示したい箇所を明確にするのに重宝します。線の太さや色、影の有無なども細かく調整できるため、簡易的な図解であればプレビューアプリだけで十分に作成できるでしょう。これらの機能を組み合わせることで、分かりやすい資料を手早く作ることが可能になります。
【PDF編】プレビューアプリでできる主な編集テクニック
次に、ビジネスシーンで特に活躍するPDFの編集機能を紹介します。複数の資料を一つにまとめたり、契約書にサインしたりといった作業が、驚くほどスムーズになります。
ページの結合と並べ替え
複数のPDFファイルを1つのファイルにまとめたい時、プレビューアプリならドラッグ&ドロップだけで完結します。
まず、結合したいPDFファイルのうちの1つを開きます。次に、メニューバーの「表示」から「サムネール」を選択し、サイドバーに全ページの縮小版を表示させてください。そのサイドバーに、結合したい別のPDFファイルをFinderからドラッグ&ドロップするだけです。ドロップした位置にページが挿入され、1つのPDFファイルとして結合されます。
ページの順番を入れ替えたい場合も、このサムネール表示画面で目的のページをドラッグして、好きな位置に移動させるだけでOKです。請求書と領収書をまとめて管理したり、複数人で作成した資料を正しい順番に並べ替えたりする作業が、直感的に素早く行えます。
契約書に便利!デジタル署名(サイン)の作成と追加
テレワークの普及に伴い、PDF化された契約書や申請書にサインを求められる機会が増えました。プレビューアプリには、このデジタル署名を作成し、PDFに挿入する機能が備わっています。
署名を作成するには、マークアップツールバーの署名アイコンをクリックし、「署名を作成」を選びます。作成方法は主に2つです。
- トラックパッドで作成: Macのトラックパッド上に、指で直接サインを書きます。書き終えたら何かキーを押して完了です。
- カメラで取り込む: 白い紙に黒いペンでサインし、それをMacのカメラにかざして取り込みます。線が認識され、きれいなデジタル署名に変換されます。
一度署名を作成すれば、それは保存され、いつでも呼び出してPDFに挿入できるようになります。挿入したサインは、大きさや位置を自由に調整可能です。この機能を使えば、わざわざ書類を印刷してサインし、スキャンして送り返すといった手間から解放されます。
テキストのハイライトと注釈の追加
論文や資料を読み込む際に、重要な部分にマーカーを引きたい時がありますよね。プレビューアプリでは、紙の書類と同じようにテキストをハイライトできます。
マークアップツールバーのハイライトアイコンを選択し、PDF上のテキストをドラッグするだけで、マーカーを引くことが可能です。ハイライトの色は変更できるほか、下線や取り消し線を引くこともできます。
また、補足情報や修正指示などを書き加えたい場合は、「ノート」機能が便利です。ノートを追加したい場所をクリックすると、メモ帳のような付箋が表示され、コメントを書き込めます。ノートは普段は小さなアイコンとして表示され、クリックすると内容が展開されるため、文書の見た目を損なわずに情報を追加できるのがメリットです。チームでの資料レビューなどに活用すると、コミュニケーションが円滑に進むでしょう。
プレビューアプリでできないこと・注意点
これほど多機能なプレビューアプリですが、万能というわけではありません。あくまで簡易的な編集ツールであるため、専門ソフトでなければできないこともあります。期待値を正しく持つために、プレビューアプリの限界も知っておきましょう。
機能・項目 | プレビューアプリ | 高機能アプリ(Photoshop, Acrobat Proなど) |
---|---|---|
レイヤーを使った画像の合成・編集 | × | ○ |
CMYKカラーモードでの編集 | × | ○ |
PDF内の既存テキストを直接編集 | × | ○ |
OCR(画像内の文字をテキスト化) | × | ○ |
複数ファイルへの一括処理 | × | ○ |
このように、プロのデザイナーが行うような複雑な画像編集や、印刷に適したCMYKカラーでの調整はできません。また、PDF内の既存の文章をWordのように直接編集することは不可能です。テキストボックス機能を使って、上から文字を追加する形で対応しましょう。
最も注意したいのは、編集内容が基本的に上書き保存される点です。元のファイルを残しておきたい場合は、編集を始める前に「ファイル」メニューから「複製」を選ぶか、編集後に「書き出す」を選んで別名で保存する習慣をつけることを強くおすすめします。macOSのバージョンによって自動保存の挙動が異なる場合があるため、大切なファイルは必ず複製してから作業にあたるのが安全です。
まとめ:Macプレビューを使いこなして作業効率をアップ!
Macのプレビューアプリは、日常的に発生する画像やPDFのちょっとした編集作業のほとんどをカバーできる、非常にパワフルなツールです。
- 画像のサイズ変更、トリミング、文字入れ
- PDFの結合、並べ替え、デジタル署名
- テキストのハイライトや注釈の追加
これらの作業のために新しいアプリを探したり、使い方を覚えたりする必要はありません。Macに標準搭載のプレビューアプリを使いこなすだけで、日々の作業効率は格段に向上するはずです。
次に何か編集作業が必要になった時は、まず「これはプレビューでできないかな?」と考えてみてください。きっとあなたの時間とコストを節約する、頼れる相棒になってくれることでしょう。