Pythonを学び始め、「何か目に見える動くものを作ってみたい」と思ったことはありませんか?そんなときにぴったりなのが、GUIアプリケーション開発です。
GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)とは、私たちが普段マウスやクリックで操作している、グラフィカルな画面のこと。Pythonには、このGUIアプリを開発するためのライブラリが豊富に揃っています。
とはいえ、「ライブラリがたくさんありすぎて、どれを選べばいいのか分からない…」というのが本音ではないでしょうか。
この記事では、数あるPythonのGUIライブラリの中から、特におすすめの7つを厳選。それぞれの特徴や選び方のポイントを、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
PythonでGUIアプリを作ると何ができる?具体例を紹介
GUIアプリと聞いても、具体的に何が作れるのかイメージが湧きにくいかもしれませんね。実は、私たちの身の回りにはPythonで作られたGUIアプリがたくさんあります。
例えば、以下のようなものが作成可能です。
- 業務効率化ツール:定型的なデータ入力やファイル操作を自動化するツール
- シンプルなデスクトップアプリ:メモ帳、計算機、ToDoリストなど
- データ可視化ツール:グラフや表を使ってデータを分析するダッシュボード
- 機械学習アプリ:画像認識や予測モデルを手軽に試せるアプリケーション
コマンドライン(黒い画面)での操作も良いですが、GUIアプリにすることで、プログラミングに詳しくない人でも直感的に使えるようになります。自分で作ったツールを同僚や友人に共有できるのも、GUI開発の大きな魅力と言えるでしょう。
【目的別】Python GUIライブラリの選び方3つのポイント
自分に合ったライブラリを選ぶには、まず「何を作りたいか」「何を重視するか」を明確にすることが大切です。ここでは、ライブラリ選びで特に重要となる3つのポイントを紹介します。
ポイント1:学習コストと日本語情報
プログラミング初心者の方であれば、まずは学習のしやすさを重視するのがおすすめです。具体的には、日本語の解説記事や書籍が豊富で、文法がシンプルなライブラリを選ぶと挫折しにくいでしょう。
Pythonに標準で搭載されている「Tkinter」は、まさにその代表例です。情報量が多いため、困ったときに解決策を見つけやすいのが大きなメリット。まずは簡単なものから、と考えているなら最適な選択肢になります。
ポイント2:デザイン性とカスタマイズの自由度
「見た目がおしゃれなアプリを作りたい」「デザインにこだわりたい」という場合は、デザイン性やカスタマイズ性が高いライブラリが向いています。
例えば、「PyQt」や「PySide」は非常に高機能で、商用アプリケーションのようなリッチな見た目を実現できます。また、最近では「CustomTkinter」のように、既存のライブラリ(Tkinter)をモダンなデザインに拡張したものも人気を集めています。
ポイント3:ライセンスと対応OS
もし作成したアプリを配布・販売する可能性があるなら、ライセンス形態の確認は必須です。ライセンスには、商用利用に制限があるものと、比較的自由に使えるものがあります。
例えば「PyQt」は非常に高機能ですが、商用利用するにはライセンス料が必要です。一方で、同じ開発元の「PySide」はLGPLというライセンスを採用しており、一定の条件下で商用利用が可能です。作りたいアプリの用途に合わせて、適切なライセンスのライブラリを選びましょう。
また、Windows、Mac、Linuxなど、複数のOSで動作させたい場合は、クロスプラットフォームに対応したライブラリを選ぶ必要があります。
Python GUIおすすめライブラリ7選を徹底比較!
それでは、具体的におすすめのGUIライブラリを7つ見ていきましょう。それぞれの特徴を掴んで、自分にぴったりのものを見つけてください。
Tkinter|Python標準装備の入門ライブラリ
Tkinter(ティーキンター)は、Pythonをインストールすればすぐに使える標準ライブラリです。追加のインストールが不要で、非常に手軽に始められるのが最大の魅力。
文法もシンプルで分かりやすく、日本語の情報も圧倒的に多いため、GUIプログラミングの第一歩として最適です。デザインは少し古風ですが、「まずはGUIアプリが動く仕組みを理解したい」という初心者の方には、最もおすすめできるライブラリです。
PyQt|多機能で本格的な商用アプリも開発可能
PyQt(パイキュート)は、C++で開発された「Qt」というフレームワークをPythonで使えるようにしたものです。非常に高機能で、プロが作るような本格的でリッチなUIを持つアプリケーションを開発できます。
多機能な分、学習コストはやや高め。また、作成したアプリのソースコードを非公開にして商用利用する場合は、ライセンスの購入が必要です。ソースコードを公開する(GPLライセンスに従う)のであれば、無料で商用利用も可能です。個人開発や学習目的、もしくはオープンソースのソフトウェア開発に向いています。
PySide|Qt公式!PyQtとほぼ同じ感覚で使える
PySide(パイサイド)は、PyQtと同じくQtをPythonから利用するためのライブラリですが、こちらはQtの開発元が公式に提供しています。
機能や使い方はPyQtとほとんど変わりませんが、ライセンス形態が異なります。PySideはLGPLライセンスを採用しているため、PyQtよりも商用利用のハードルが低いのが特徴です。そのため、ビジネスでの利用を視野に入れている場合は、PySideが有力な選択肢となるでしょう。
Kivy|スマホアプリも作れるマルチタッチ対応フレームワーク
Kivy(キビー)は、WindowsやMac、Linuxはもちろん、iOSやAndroidといったスマートフォンのアプリも開発できるのが大きな特徴です。
「一つのコードで、どこでも動く」をコンセプトにしており、マルチタッチ操作を前提としたUIデザインが可能です。他のライブラリとは少し毛色が異なり、独自のUIコンポーネントを持っています。PCとスマホの両方で動くアプリを作りたい場合に最適なフレームワークです。
wxPython|OSネイティブな見た目が魅力
wxPython(ダブルエックスパイソン)は、OS標準の見た目(ネイティブUI)を持つアプリを開発できるライブラリです。WindowsならWindows風、MacならMac風のウィンドウやボタンを表示してくれるため、ユーザーにとって親しみやすいデザインになります。
歴史が古く、安定性にも定評があります。OSに溶け込むような、自然なデザインのアプリケーションを作りたい場合におすすめです。
CustomTkinter|Tkinterをおしゃれにカスタマイズ
CustomTkinter(カスタムティーキンター)は、その名の通り、標準ライブラリであるTkinterを拡張し、モダンで美しいデザインを実現するためのライブラリです。
Tkinterの手軽さはそのままに、ダークモードに対応していたり、角丸のボタンが簡単に作れたりと、デザイン面が大幅に強化されています。「Tkinterのシンプルさは良いけど、もう少し見た目をおしゃれにしたい」という方にぴったりの選択肢です。
Dear PyGui|GPUレンダリングで高速描画
Dear PyGui(ディアパイグイ)は、GPU(画像処理装置)を使って描画を行うため、非常に高速に動作するのが特徴です。
主に、データ可視化ツールや開発者向けのデバッグツール、ゲームのUIなどで利用されています。他のライブラリとは異なる描画方式のため少し癖はありますが、パフォーマンスを重視するアプリケーション開発において強力な選択肢となります。
【比較表】Python GUIライブラリ7選の特徴まとめ
ここまで紹介した7つのライブラリの特徴を、比較表にまとめました。ライブラリ選びの参考にしてください。
ライブラリ名 | 学習コスト | デザイン性 | ライセンス | クロスプラットフォーム | スマホ対応 | こんな人におすすめ |
---|---|---|---|---|---|---|
Tkinter | 低 | △ | Python | ○ | ✕ | GUIプログラミングが初めての人、簡単なツールを作りたい人 |
PyQt | 高 | ◎ | GPL/商用 | ○ | ✕ | ソースコードを公開できる、またはライセンス購入を厭わない本格アプリ開発者 |
PySide | 高 | ◎ | LGPL | ○ | ✕ | 高機能なアプリを商用利用したい人 |
Kivy | 中 | ○ | MIT | ◎ | ◎ | スマホアプリやマルチタッチ対応アプリを作りたい人 |
wxPython | 中 | ○ | wxWindows | ○ | ✕ | OS標準の見た目にこだわりたい人 |
CustomTkinter | 低 | ◎ | MIT | ○ | ✕ | Tkinterの手軽さでおしゃれなアプリを作りたい人 |
Dear PyGui | 中 | ○ | MIT | ○ | ✕ | パフォーマンス重視のツールや可視化アプリを作りたい人 |
Python GUI開発の学習ステップ
どのライブラリを使うか決めたら、さっそく開発を始めてみましょう。GUI開発は、以下の4ステップで進めるのがおすすめです。
- 作りたいものを具体的にイメージする
まずは、計算機やToDoリストなど、簡単なもので構いません。完成形をイメージすることで、必要な機能が明確になります。 - ライブラリの公式ドキュメントを読む
選んだライブラリの公式サイトには、基本的な使い方(チュートリアル)が必ず載っています。まずはそれを一通り読んで、全体の流れを掴みましょう。 - サンプルコードを真似て動かしてみる
チュートリアルや解説記事にあるサンプルコードを、実際に自分で書いて動かしてみることが上達への一番の近道です。 - 機能を少しずつ追加・変更する
サンプルコードが動いたら、「ボタンの色を変えてみる」「新しい機能を追加してみる」など、自分なりにカスタマイズしてみましょう。試行錯誤を繰り返すことで、理解が深まっていきます。
まとめ|まずはTkinterから触ってみよう
今回は、PythonでGUIアプリを開発するためのおすすめライブラリ7選と、その選び方について解説しました。
それぞれに特徴があり、どれを使うか迷ってしまうかもしれませんが、もしあなたがGUIプログラミングの初心者なら、まずは標準ライブラリの「Tkinter」から始めてみることを強くおすすめします。
TkinterでGUIの基本的な仕組みを理解すれば、他のライブラリを学ぶ際にもその知識が必ず役立ちます。この記事が、あなたのGUIアプリ開発の第一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。