Macの「ターミナル」と聞くと、黒い画面に白い文字が並ぶ、なんだか難しそうなイメージがありませんか?「エンジニアやプログラマーが使うものでしょ?」と感じるかもしれません。
実は、ターミナルはMacをより速く、そして効率的に操作するための便利なツールなんです。この記事では、初心者の方でもすぐに使える、日常的に役立つコマンドを10個厳選してご紹介します。
この記事を読み終える頃には、ターミナルの基本的な使い方が分かり、黒い画面への苦手意識がなくなっているはずです。さあ、一緒にターミナルの世界へ一歩踏み出してみましょう。
Macのターミナルとは?基本をサクッと解説
Macに標準でインストールされている「ターミナル」は、キーボードでコマンド(命令文)を打ち込むことで、Macを直接操作できるアプリケーションです。普段私たちがマウスやトラックパッドで行っているファイル操作などを、文字入力だけで実行できます。
このような文字ベースの操作方法を「CUI(キャラクターユーザーインターフェース)」と呼びます。一方、アイコンやウィンドウをマウスで操作する方法は「GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)」です。
CUIは一見とっつきにくいですが、慣れるとGUIよりも素早く正確に作業できる場面がたくさんあります。例えば、たくさんのファイルの名前を一度に変更したり、特定のファイルを探し出したりするのが得意です。
まずはターミナルを起動してみましょう。
Launchpadの「その他」フォルダの中にある「ターミナル.app」をクリックするか、Spotlight検索(command + space)で「terminal」と入力すればすぐに見つかりますよ。
【初心者向け】Macのターミナルで日常的に使える便利コマンド10選
それでは、早速ターミナルで使える便利なコマンドを見ていきましょう。最初は難しく感じるかもしれませんが、一つひとつはとてもシンプルです。コピー&ペーストして試すだけでも大丈夫ですよ。
ls:ファイルやフォルダの一覧を表示する
ls
は「list」の略で、今いる場所(ディレクトリ)にあるファイルやフォルダの一覧を表示する、最も基本的なコマンドの一つです。Finderでフォルダを開いて中身を確認するのと同じ操作だと考えてください。
ls
これだけで、現在いるディレクトリ内の項目がずらっと表示されます。
もう少し詳しい情報が見たい場合は、オプションを追加します。例えば -a
をつけると、通常は隠されている設定ファイル(ドット.
から始まるファイル)も表示可能です。
ls -a
また、-l
をつけると、ファイルの更新日時や権限(パーミッション)、所有者といった詳細情報も一緒に確認できます。
ls -l
オプションは組み合わせることもでき、ls -al
のように入力すると、「隠しファイルを含むすべてのファイルを詳細表示する」という命令になります。まずは ls
と入力して、自分のMacにどんなファイルがあるか覗いてみることから始めてみましょう。
cd:作業する場所(ディレクトリ)を移動する
cd
は「change directory」の略で、作業するディレクトリを移動するためのコマンドです。Finderでフォルダをダブルクリックして移動するのと同じ役割を果たします。
例えば、デスクトップに移動したい場合は、以下のように入力します。
cd Desktop
これで、現在の作業場所がデスクトップになりました。この状態で ls
コマンドを使えば、デスクトップ上のファイルやフォルダの一覧が表示されるはずです。
一つ上の階層のディレクトリに戻りたい場合は、ピリオドを2つ続けた ..
を使います。
cd ..
どの場所にいても、自分のホームディレクトリ(ログインしているユーザーの基本フォルダ)に一瞬で戻りたいときには、cd
とだけ入力するか、チルダ ~
を使います。
cd ~
cd
コマンドを使いこなせると、Mac内の様々な場所へ自由自在に移動できるようになり、ファイル操作が格段にスムーズになります。行きたい場所のパス(場所を示す住所のようなもの)を指定して、いろいろなディレクトリを旅してみてください。
pwd:今どこにいるか確認する
pwd
は「print working directory」の略で、現在作業しているディレクトリのフルパス(ルートから現在地までの道筋)を表示するコマンドです。
ターミナルを使っていると、「あれ、今自分はどのフォルダで作業しているんだっけ?」と迷子になってしまうことがよくあります。特に、cd
コマンドで色々な場所を移動していると、現在地が分からなくなりがちです。
そんなときに、このコマンドを入力します。
pwd
すると、/Users/your_username/Desktop
のような形で、今いる場所の絶対パスが表示されます。これにより、自分の現在地を正確に把握できるため、ファイル操作のミスを防ぐのに役立ちます。
cd
コマンドで移動した後に pwd
を実行して、本当に目的の場所に移動できているか確認する、というようにセットで使うのがおすすめです。とてもシンプルですが、ターミナル操作におけるコンパスのような、非常に重要な役割を持つコマンドといえるでしょう。
mkdir:新しいフォルダ(ディレクトリ)を作成する
mkdir
は「make directory」の略で、新しいフォルダ(ディレクトリ)を作成するコマンドです。Finderで右クリックして「新規フォルダ」を選択する操作と同じです。
例えば、デスクトップに「test_folder」という名前のフォルダを作りたい場合、まず cd Desktop
でデスクトップに移動してから、以下のコマンドを実行します。
mkdir test_folder
これで、デスクトップに「test_folder」という空のフォルダが作成されたはずです。Finderで確認してみてください。
一度に複数のフォルダを作成することも可能です。フォルダ名をスペースで区切って入力します。
mkdir folder1 folder2 folder3
また、階層構造を持ったフォルダを一度に作りたい場合は -p
オプションが便利です。例えば、「parent」フォルダの中に「child」フォルダを作りたい場合、通常なら mkdir parent
を実行してから cd parent
で移動し、mkdir child
を実行する必要があります。しかし、-p
を使えば一発です。
mkdir -p parent/child
このコマンドを実行すると、「parent」フォルダがなくても自動で作成し、その中に「child」フォルダを作ってくれます。ファイルの整理をしたいときに非常に役立つコマンドです。
touch:空のファイルを作成する
touch
は、中身が空の新しいファイルを作成するためのコマンドです。また、すでに存在するファイルに対して使うと、そのファイルの最終更新日時を現在時刻に更新する役割も持っています。
プログラミングの練習用ファイルや、ちょっとしたメモ用のテキストファイルをすぐに作りたいときに便利です。
例えば、test.txt
という名前のテキストファイルを作成したい場合は、以下のように入力します。
touch test.txt
これで、カレントディレクトリに test.txt
という0KBのファイルが作成されます。ls -l
コマンドで確認すると、ファイルサイズが0になっているのが分かるでしょう。
mkdir
と同様に、一度に複数のファイルをスペースで区切って作成することもできます。
touch file1.txt file2.html file3.js
このコマンドは、ファイルの中身を編集する機能はありません。あくまでファイルという「器」を作るだけのシンプルなコマンドです。ファイルの中身を編集するには、後述する vi
や nano
といったテキストエディタを使うか、Finderからテキストエディットアプリで開く必要があります。まずはファイルを手軽に作成する手段として覚えておくと便利です。
cp:ファイルやフォルダをコピーする
cp
は「copy」の略で、ファイルやフォルダをコピーするためのコマンドです。Finderでファイルを選択して command + c
、command + v
をするのと同じ操作です。
基本的な使い方は cp [コピー元] [コピー先]
です。
例えば、test.txt
というファイルを test_copy.txt
という名前でコピーしたい場合は、以下のようにします。
cp test.txt test_copy.txt
これで、同じディレクトリ内に test.txt
の内容が複製された test_copy.txt
が作成されます。
別の場所にコピーすることも可能です。例えば、test.txt
をデスクトップにコピーしたい場合は、次のように入力します。
cp test.txt Desktop/
フォルダ(ディレクトリ)を丸ごとコピーしたい場合は、-R
(または -r
)オプションが必要です。R
は「recursive(再帰的な)」を意味し、フォルダの中身もすべて一緒にコピーするという意味になります。
cp -R my_folder my_folder_copy
このコマンドを使えば、バックアップを取りたいときや、同じ構成のファイルを別の場所で使いたいときに、Finderを開かずに素早く複製できます。
mv:ファイルやフォルダの移動・名前変更
mv
は「move」の略で、ファイルやフォルダを移動させたり、名前を変更したりするのに使うコマンドです。一つのコマンドで二つの役割をこなす、とても便利なコマンドといえます。
まず、ファイルの名前を変更する方法です。基本的な構文は mv [元の名前] [新しい名前]
です。
mv old_name.txt new_name.txt
これで old_name.txt
が new_name.txt
という名前に変わります。
次に、ファイルを別のディレクトリに移動させる方法です。この場合の構文は mv [ファイル名] [移動先のディレクトリ]
となります。
mv my_file.txt Desktop/
このコマンドで、my_file.txt
がデスクトップに移動します。フォルダ(ディレクトリ)を移動させる場合も同じ構文で、cp
のような -R
オプションは必要ありません。
mv
の面白いところは、移動と名前変更を同時に行える点です。
mv my_file.txt Desktop/renamed_file.txt
この場合、my_file.txt
がデスクトップに移動し、さらに renamed_file.txt
という名前に変更されます。Finderでドラッグ&ドロップするよりも速く操作できることも多く、覚えておくと作業効率がぐっと上がります。
rm:ファイルやフォルダを削除する
rm
は「remove」の略で、ファイルやフォルダを削除するためのコマンドです。Finderでファイルをゴミ箱に入れる操作と似ていますが、一つ大きな違いがあります。rm
で削除したファイルはゴミ箱に入らず、即座に完全に削除されるという点です。元に戻すことはできないため、使用には注意が必要です。
(厳密にはファイルシステムからの削除であり、専用ツールで復旧できる場合もあります)
ファイルの削除は、ファイル名を指定するだけです。
rm old_file.txt
複数のファイルを一度に削除することもできます。
rm file1.txt file2.txt
フォルダ(ディレクトリ)を削除する場合は、cp
と同じように -r
オプションが必要です。フォルダとその中身をすべて再帰的に削除します。
rm -r old_folder
中身が入っているフォルダを -r なしで削除しようとするとエラーになります。
このコマンドは非常に強力なため、実行する前には ls や pwd を使って、削除しようとしているファイルや場所が本当に正しいか、十分に確認する癖をつけましょう。
特に rm -rf / のようなコマンドはシステム全体を破壊する可能性があるため、絶対に実行しないでください。
※現代のmacOSでは保護機能がありますが、このコマンドは避けるのが無難です。
top:Macの動作状況をリアルタイムで監視する
top
は、現在Macで実行されているプロセス(プログラム)や、CPU・メモリの使用状況をリアルタイムで監視できるコマンドです。アクティビティモニタをターミナルで見るようなイメージです。
ターミナルで top
と入力して実行してみてください。
top
すると、画面が切り替わり、たくさんの情報がリアルタイムで更新され始めます。どのアプリがどれだけCPUを使っているか(%CPU)、メモリを消費しているか(MEM)などが一覧で表示されます。
Macの動作がなんだか重いなと感じたときに、このコマンドを使えば原因となっているプロセスを特定する手がかりになります。一番上に表示されているプロセスが、最もCPUに負荷をかけているものです。
top
の表示は自動で更新され続けます。この監視モードを終了するには、q
キーを押すか、control + c
を入力してください。
表示される情報が多くて最初は戸惑うかもしれませんが、「CPU」や「MEM」の項目に注目するだけでも、お使いのMacの内部で何が起こっているのかを垣間見ることができ、非常に興味深いですよ。
say:Macに好きな言葉を喋らせる
最後に、少し変わり種の面白いコマンドを紹介します。say
は、入力したテキストをMacに読み上げさせるコマンドです。
使い方はとても簡単で、say
の後に喋らせたい言葉を続けるだけです。
say "Hello, Mac"
日本語も問題なく喋ってくれます。
say "こんにちは、マック"
声の種類を変えることもできます。-v
オプションの後に話者の名前を指定します。どんな声が使えるかは、say -v '?'
で一覧を確認できます。例えば、Kyoko
という声で喋らせてみましょう。
say -v Kyoko "ターミナルって面白いですね"
このコマンド自体が直接的に作業効率を上げるわけではありませんが、ターミナルに親しみを持つきっかけになります。長いコマンドの処理が終わったことを知らせるためにスクリプトの最後に組み込んだり、単純に遊んでみたりと、アイデア次第で色々な使い方ができます。ぜひ試してみてください。
コマンドを使いこなすための豆知識
コマンドをいくつか覚えたら、次にもっと効率的に操作するための便利な小技も知っておくと良いでしょう。これらを知っているだけで、ターミナル操作のスピードと快適さが格段に向上します。
Tabキーによる入力補完
ターミナルで最も便利な機能の一つが、Tabキーによる入力補完です。ファイル名やコマンドの一部を入力した状態で Tab
キーを押すと、残りの部分を自動で補完してくれます。
例えば、デスクトップに my_super_long_file_name.txt
というファイルがあるとします。cd D
と入力して Tab
を押せば cd Desktop/
に、touch my_
と入力して Tab
を押せば touch my_super_long_file_name.txt
のように、一瞬で入力が完了します。
候補が複数ある場合は、もう一度 Tab
キーを押すと候補の一覧が表示されます。長いファイル名やディレクトリ名を正確に、そして素早く入力できるため、タイプミスを防ぎ、作業時間を大幅に短縮できます。
矢印キーでコマンド履歴を呼び出す
キーボードの ↑
(上矢印)キーを押すと、以前に実行したコマンドの履歴を一つずつ遡って表示できます。逆に ↓
(下矢印)キーで新しい履歴に進みます。
同じコマンドを何度も実行したい場合や、少しだけ修正して再度実行したい場合に、わざわざ打ち直す必要がありません。数回前のコマンドなら、矢印キーを数回押すだけですぐに呼び出せます。この機能は無意識に使えるようになると、本当に手放せなくなりますよ。
clearで画面をクリアする
コマンドをたくさん実行していると、画面がごちゃごちゃして見づらくなってきます。そんなときは clear
コマンドを使いましょう。
clear
これを実行すると、ターミナルの表示がすべて消去され、綺麗な状態から作業を再開できます。過去の表示が消えるだけで、コマンドの履歴などがリセットされるわけではないので、安心して使ってください。画面をリフレッシュしたいときに便利なコマンドです。
コマンド比較表|目的別にサクッと確認
この記事で紹介したコマンドを、目的別に表でまとめました。どのコマンドが何をするのか忘れてしまったときに、サッと確認するのにお使いください。
目的 | コマンド | 主な機能 |
---|---|---|
ファイル・フォルダ操作 | ls | ファイルやフォルダの一覧を表示する |
cd | 作業するフォルダ(ディレクトリ)を移動する | |
pwd | 現在いる場所のパスを表示する | |
mkdir | 新しいフォルダを作成する | |
touch | 空のファイルを作成する | |
cp | ファイルやフォルダをコピーする | |
mv | ファイルやフォルダの移動・名前の変更 | |
rm | ファイルやフォルダを削除する(注意が必要) | |
システム・その他 | top | Macの動作状況をリアルタイムで監視する |
say | 入力したテキストをMacに読み上げさせる |
【バージョン別】macOSでDNSキャッシュをクリア(削除)する方法
まとめ
今回は、Mac初心者の方でもすぐに使える便利なターミナルコマンドを10個ご紹介しました。
ls
で中身を見てcd
で移動しmkdir
やtouch
で新しいものを作りcp
やmv
で整理してrm
で不要なものを消す
これがターミナルでの基本的なファイル操作の流れです。最初は覚えるのが大変かもしれませんが、毎日少しずつ触っているうちに、自然と手が動くようになります。
今回紹介したコマンドは、広大なターミナルの世界のほんの入り口に過ぎません。しかし、この基本をマスターすれば、より複雑な操作にも挑戦していく土台ができます。