MDN推奨JavaScriptコーディングガイド徹底解説|React・TypeScript対応の最新ベストプラクティス

MDN推奨JavaScriptコーディングガイド徹底解説|React・TypeScript対応の最新ベストプラクティス

MDN推奨JavaScriptコーディングガイド徹底解説|React・TypeScript対応の最新ベストプラクティス

JavaScript は自由度が高く、個々の書き方が混在しやすい言語です。チーム開発ではスタイルの不一致がバグの温床になり、レビュー工数も膨らみます。

Mozilla が公開する JavaScript Sample Code Guide は、同社が社内のドキュメントやチュートリアル用に用いているコーディング規約を外部公開したものです。公式の絶対基準ではありませんが、実践的かつ網羅的に整理されているため、社内ガイドのたたき台として価値があります。

ここではこのガイドを軸に、最新ブラウザ環境・React 18・TypeScript 5 で役立つベストプラクティスを具体例付きで解説します。

目次

配列初期化のベストプラクティス ― Array.from と new Array の使い分け

配列を生成するときは [] を第一選択とし、要素数のみが必要な場合に new Array(length) を検討します。全要素を同じ値で埋めるなら new Array(n).fill(0)、添字列を作るなら Array.from({length: n}, (_, i) => i) が明示的です。

Array.from()fill() の二段階処理を避けられるため意図が読み取りやすく、未初期化スロットによる map()forEach() の無視挙動を防げます。パフォーマンス差は現行エンジンでは誤差ですが、可読性とバグ予防の観点でリテラル優先が推奨されます。

参考:ECMAScript® 2023 Language Specification

コメントスタイル比較 ― MDNとGoogle Style Guideの差異

MDN は // 単行コメント 形式で文末に句点を打たない運用を提示しています。一方、Google JavaScript Style Guide は文として完結させるためピリオドを推奨します。

どちらを採用するかはプロジェクト方針次第ですが、統一 が最優先です。複数行コメントは // を行頭に付けると差分表示が分かりやすく、/* … */ は引数の省略記号などコード自体の意味を示す場面に限定します。

説明よりも関数名・変数名で意図を表すことが長期保守では有効です。

関数宣言とアロー関数 ― 巻き上げを活かした読みやすい構造

再利用関数や React コンポーネントは関数宣言で定義し、巻き上げ(ホイスティング)を利用して主要ロジックをファイル先頭へ集約します。これにより呼び出し側と定義が近くなり、可視範囲が把握しやすくなります。

一方、コールバックにはアロー関数を採用し、暗黙の戻り値が単一式で完結する場合のみブレースを省略します。複数行や副作用がある場合は必ず波括弧を残し、可読性を優先しましょう。export 方針は「宣言時に即時 export」を推奨し、モジュール外公開の可否を一目で判別できるようにします。

反復処理 ― for…of を基準にし、副作用の制御を徹底

for...ofbreakreturncontinue が使えるため柔軟性が高く、全要素の走査では第一候補に据えます。forEach() は関数スコープを終了できない点に注意し、ログ出力や DOM 操作など副作用限定の処理にとどめると意図が明確です。

インデックスが必要な場合は for...of.entries() を使う方法(例:for (const [i, v] of arr.entries()))や、forEach((v, i) => { ... }) のように明示的な関数ブロックを用いる方法があります。

マッピングや絞り込みは mapfilter など宣言的 API を選び、処理目的をコードに埋め込むことで検索性を高めましょう。

制御フローを浅く保つ ― 早期 return と統一ブレース

条件分岐が戻り値を決定する場合は早期 return で関数を抜け、else ブロックを省きます。これによりネストが一段浅くなり、視線移動が減少します。

また、単文でも iffor のブレースを省略しない方針を徹底すると、追記時のバグを防げます。switch 文では returnbreak を混在させず、値を返すロジックは return に統一してください。case 内で新たに変数を束縛する場合は波括弧で局所スコープを作り、副作用の漏れを防止します。

スコープと定数管理 ― const/let戦略と TAX_RATE 命名

変更予定のない識別子は const、再代入が不可避な場合のみ let を使い、var はレガシー互換に限定します。複数の変数を一行に並べず、一宣言一行 を守ると差分が明確になりレビュー効率が上がります。

例示として日本の消費税率を示すなら const TAX_RATE = 0.1; のように一般名詞を用いると、地域固有値である誤解を避けられます。プロジェクトが多言語・多地域に対応する可能性がある場合は JP_TAX_RATE などと地域接頭辞を加えるとより明確です。

TypeScript で as const を使うとリテラル型が固定化され便利ですが、再利用や拡張を見据える場合は汎用型に留める判断も必要です。

React 18とTypeScript 5への応用 ― Hooks, Suspense, as constの注意点

React 18 では関数コンポーネント+Hooks が基本形です。useStateuseEffect を呼び出す順序は条件分岐外に固定し、Hook Rules を ESLint で自動チェックします。

並列処理には SuspenseuseTransition を組み合わせ、UI ブロッキングを防ぎます。型安全性を高める目的で as const によりリテラル型を固定する手法が流行していますが、プロパティ合成やマージが想定されるデータ構造に多用すると柔軟性を損ないます。

型を閉じるか開くかは、将来の要件変更と相談しながら決定してください。

参考:TypeScript Handbook – Literal Types & as const

ツールによる自動統制 ― ESLint・Prettier・CI設定サンプル

スタイルを人力で守るのは非効率です。eslint:recommended@typescript-eslinteslint-plugin-react を加え、MDN 準拠ルールを .eslintrc.js(CJS 環境なら .cjs も可)に定義します。

また、TypeScript を扱う場合は parser@typescript-eslint/parser を指定することで、型情報を含む構文解析が有効になります。

例:

{
  "parser": "@typescript-eslint/parser",
  "extends": ["eslint:recommended", "plugin:@typescript-eslint/recommended", "plugin:react/recommended"],
  "rules": {
    "no-var": "error",
    "prefer-const": "error",
    "arrow-body-style": ["error", "as-needed"]
  }
}

Prettier とは役割を分離し、コードフォーマットのみを委任します。GitHub Actions で npm run lint を実行し、失敗時にマージをブロックすると合意違反の混入を防げます。

参考:ESLint 公式ドキュメント

モジュールシステムの選択 ― ES Modules vs CommonJS

ブラウザとモダンツールチェーン(Vite・Next.js など)は ES Modules を前提としています。Node.js でも type": "module"package.json に設定すれば ESM がデフォルトで使え、import fs from "node:fs" のようにネイティブモジュールを読み込めます。

一方、既存の CJS エコシステムと混在する場合は拡張子 .cjs を使い分けると互換性を保てます。ESM への移行はツリ―シェイキングとブラウザキャッシュの効率を高め、ビルドサイズ削減に寄与します。

まとめ ― ガイドライン導入ロードマップ

MDN JavaScript Sample Code Guide は「書き方を学ぶ資料」というより、「チーム合意のひな型」としての価値が大きいです。

配列リテラルや for…of を軸にした基本ルールを linter で自動化し、PR テンプレートにチェックリストを用意すると、人間はロジックの妥当性に集中できます。

React 18・TypeScript 5 の最新機能もスタイル統一の枠組みで運用すれば学習コストを抑えつつ品質を維持できます。

段階的な導入として「CI で警告のみ → エラー昇格 → 自動修正適用」の三段階を踏むと、既存コードベースへの負荷を最小化しつつ移行が可能です。

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