Appleシリコン搭載のMacは、そのままでも非常に高性能でサクサク動きますよね。しかし、いくつかの設定を見直すだけで、そのポテンシャルをさらに引き出し、より快適なMacライフを送ることが可能です。
この記事では、「スワップメモリ対策」「ファン制御」「ユニバーサルコントロール」といった少し専門的な内容から、誰でも簡単にできる設定まで、あなたのMacを最適化する具体的な方法を分かりやすく解説します。
「最近、少し動作が重く感じることがある」「もっと作業効率を上げたい」と感じている方は、ぜひ参考にしてください。
AppleシリコンMacのパフォーマンスを最大限に引き出す基本設定
まずは、多くの方に効果が期待できる基本的な設定から見ていきましょう。少しの工夫で、Macの快適さが大きく変わることもありますよ。
スワップメモリ対策でメモリプレッシャーを軽減する
「スワップメモリ」や「メモリプレッシャー」と聞くと、少し難しく感じるかもしれません。簡単に言うと、Macが人間でいうところの「作業机の広さ(メモリ)」が足りなくなったときに、一時的に「床(SSD)に荷物を置く」のがスワップです。頻繁に床に荷物を置いたり拾ったりすると、作業効率が落ちますよね。Macも同じで、スワップが多発するとパフォーマンスが低下してしまうのです。
この状態を「メモリプレッシャーが高い」と言います。特に、多くのアプリを同時に開いたり、ブラウザのタブを何十個も開いたりする方は注意が必要です。アクティビティモニタの「メモリ」タブを開き、下部の「メモリプレッシャー」のグラフが頻繁に黄色や赤色になっている場合は、対策を考えましょう。
一番の対策は、不要なアプリやブラウザのタブをこまめに閉じることです。また、メニューバーに常駐しているアプリも、意外とメモリを消費していることがあります。定期的に見直して、使っていないものは終了させる習慣をつけるだけで、Macの動作はかなり軽快になります。根本的な解決策としては、次にMacを買い替える際に、ご自身の使い方より少し余裕のあるメモリ容量を選ぶことをお勧めします。
ファン制御アプリで熱対策を最適化する
Appleシリコンは、電力効率が良く発熱が少ないのが大きな魅力です。そのため、MacBook Airにはファンすら搭載されていません。しかし、MacBook Proなどのファン付きモデルでも、動画編集やゲームといった高負荷な作業を長時間続けると、内部の温度は上昇します。Macは本体を守るために、一定の温度に達すると自動的に性能を落とす「サーマルスロットリング」という機能が働くのです。
通常、Macのファンはとても静かで、かなり負荷をかけないと回転数が上がりません。これは静音性を重視したAppleの素晴らしい設計ですが、パフォーマンスを最大限に引き出したい場面では、少しもどかしいことも。そこで役立つのが、ファンの回転数を自分でコントロールできるアプリです。
代表的なアプリに「Macs Fan Control」があります。これはサードパーティ製のアプリであり、インストールや使用はご自身の判断で行ってください。これを使えば、CPUやGPUの温度に応じて、早めにファンを回転させて内部を冷却し、サーマルスロットリングによる性能低下を防ぐことが可能です。ただし、ファンを強制的に高回転させると、その分ファンの寿命を縮めたり、ホコリが溜まりやすくなったりする可能性はあります。常時使うのではなく、ここぞという高負荷な作業をするときだけオンにするのが賢い使い方でしょう。
システム設定を変更する前には、万が一に備えてTime Machineなどでバックアップを取ることを強く推奨します。 これにより、何か問題が発生した場合でも元の状態に安全に戻すことができます。
項目 | デフォルト設定 | ファン制御アプリ使用時 |
---|---|---|
静音性 | 非常に高い | 低下する(ファンの音がする) |
冷却性能 | パフォーマンスより静音性重視 | 高い(積極的に冷却する) |
ピーク性能 | 熱により制限されることがある | 維持しやすい |
設定の自由度 | なし(自動) | 高い(手動・センサー基準で設定可) |
おすすめな人 | 静かな環境で使いたい人 | 高負荷な作業で性能を維持したい人 |
ユニバーサルコントロールを使いこなして作業効率を上げる
ユニバーサルコントロールは、パフォーマンスを直接向上させる機能ではありませんが、「作業効率」という広い意味でのパフォーマンスを劇的に上げてくれる機能です。これは、1組のキーボード、マウス(またはトラックパッド)で、MacとiPadをシームレスに行き来できる魔法のような機能。
例えば、Macでメインの作業をしながら、隣に置いたiPadで参考資料を表示したり、Apple Pencilで手書きのメモを取ったり。Macの画面からマウスポインタをスッと動かすだけで、そのままiPadの操作ができてしまいます。ファイルのドラッグ&ドロップも可能なので、Macで作った資料をiPadに送るのも簡単です。
設定は「システム設定」>「ディスプレイ」から行います。お使いのMacとiPadが対応機種であり、同じApple IDでサインインしているなどの条件を満たせば、すぐに使い始めることができます。具体的には、macOS Monterey 12.4以降を搭載したMac(MacBook 2016年以降、MacBook Pro 2016年以降、MacBook Air 2018年以降、iMac 2017年以降など)と、iPadOS 15.4以降を搭載したiPad(iPad Pro全モデル、iPad Air 第3世代以降、iPad 第6世代以降、iPad mini 第5世代以降など)が対応しています。これまで2つのデバイスを別々に操作していた手間がなくなり、思考を中断させずに作業に集中できるため、結果的にタスクをこなすスピードが格段に向上するでしょう。
参考:ユニバーサルコントロール:1 つのキーボードとマウスで Mac と iPad を行き来する (Apple サポート)
知っておくと便利な中〜上級者向け設定
基本的な設定に加えて、さらにMacを自分好みにカスタマイズしたい方向けの、一歩進んだ設定をご紹介します。
省電力モードの使い分けでバッテリーと性能を両立させる
MacBookシリーズには、バッテリー消費を抑えるための「省電力モード」が搭載されています。このモードを有効にすると、Macはエネルギー消費を抑えるために、自動的にパフォーマンスを少しだけ制限します。Webブラウジングや文章作成といった普段使いでは、ほとんど違いを感じることはないでしょう。
外出先でバッテリーを長持ちさせたいときには非常に便利な機能ですが、自宅やオフィスで電源に接続して使う際に、最高のパフォーマンスを求めるならオフにしておくのがおすすめです。「システム設定」>「バッテリー」から、「省電力モード」の項目を「常に使用」「バッテリー使用時のみ」「電源アダプタ接続時のみ」「使用しない」から選択できます。
例えば、「バッテリー使用時のみ」に設定しておけば、外出中はバッテリーを節約し、電源に繋いだらフルパワーを発揮するといった、賢い使い分けが可能です。ご自身の作業環境やスタイルに合わせて設定を見直すことで、バッテリー寿命とパフォーマンスの最適なバランスを見つけることができるでしょう。常に最高のパフォーマンスを求めるなら「使用しない」に設定しておくのがベストな選択です。
【バージョン別】macOSでDNSキャッシュをクリア(削除)する方法
バックグラウンドアプリと通知を管理して集中力を高める
Macを使っていると、自分で起動したつもりがなくても、裏側(バックグラウンド)で動いているプログラムが数多く存在します。これらはMacの動作に不可欠なものも多いですが、中にはインストールしたアプリが自動で起動し、貴重なCPUパワーやメモリを少しずつ消費している場合があるのです。
これを整理するには、「システム設定」>「一般」>「ログイン項目」を確認してみましょう。「ログイン時に開く」に登録されているアプリは、Macの起動と同時に立ち上がります。本当に必要なもの以外は、リストから選択して「-」ボタンで削除すると、起動が速くなるだけでなく、普段の動作も軽快になります。また、「バックグラウンドでの実行を許可」の項目もチェックし、心当たりのないアプリや不要なアプリはオフにしておきましょう。
さらに、作業中の集中力を削ぐ大きな原因が「通知」です。一見パフォーマンスとは無関係に思えますが、通知が来るたびに意識が中断されると、作業効率は大きく低下します。不要なアプリの通知はオフにする、あるいは「集中モード」を活用して、作業中は本当に重要な通知だけを受け取るように設定するのがおすすめです。こうした細かな設定の積み重ねが、最終的に大きな生産性の向上に繋がります。
Appleシリコン搭載Macでスリープが勝手に解除される問題と対策
まとめ:自分に合った設定でMacを最適化しよう
今回は、AppleシリコンMacのパフォーマンスを最大限に引き出すための、さまざまな設定をご紹介しました。
- スワップ対策でメモリへの負荷を減らす
- ファン制御で高負荷時の性能低下を防ぐ
- ユニバーサルコントロールで作業効率を上げる
- 省電力モードを使い分けて性能とバッテリーを両立する
- バックグラウンドアプリを整理してリソースを確保する
すべての設定を試す必要はありません。大切なのは、ご自身のMacの使い方や、どのような点に不満を感じているかを把握し、それに合った設定を取り入れることです。特にシステムに関する設定を変更する際は、事前にバックアップを取るなど、慎重に進めることをお勧めします。
この記事を参考に、ぜひあなたのMacを最高の状態にカスタマイズしてみてください。きっと、今まで以上に快適でパワフルなMac体験が待っているはずです。