職業訓練の「就職率」ってどれくらい?就職できる?
職業訓練を受けて転職したい!実際のところ就職率ってどのくらいなの?
就職・転職をしたい人にとって就職率は一番気になる指標だよね。
この記事では職業訓練を受けた人の就職率や統計の取り方・訓練校の本音と裏事情まで紹介していきます。
職業訓練校の就職率
一般的に実施されている職業訓練校の就職率は下記のとおり。
< 職業訓練の就職率 >
公共職業訓練(うち離職者訓練)
- 施設内訓練:87.5%
- 委託訓練:75.1%
求職者支援訓練
引用元:平成30年度におけるハロートレーニングの実績(PDF)
- 基礎コース:59.4%
- 実践コース:63.8%
この数字を高いとみるか低いとみるかは人それぞれですね。
ただ、個人的には「微妙かな」と思っています。
職業訓練における就職率の統計の取り方
そもそも上記で挙げた職業訓練校において、何をもって「就職した」とみなすのか。
訓練の種類や自治体によって多少の違いはありますが、大抵は下記のとおりです。
訓練修了後に「就職」扱いとなる条件
- 訓練修了後、定められた期間内に就職(90日のケースが多い)
- 4ヶ月以上の雇用が見込める契約での就職
- 勤務時間が週20時間以上
これらの条件を全て満たしたうえで、訓練校に就職の報告書類を提出すれば「就職者」としてカウントされます。
例えば訓練修了後すぐに就職できても、2ヶ月契約だったりすると、4ヶ月以上の雇用には該当しないため「未就職」扱いとなります。
雇用形態や職種の縛りがない
勘の良い方はお気づきかもしれませんが…
上記の条件には雇用形態については縛りがなく、パートやアルバイトであっても長期就労が見込めるのであれば「就職」にカウントされます。
※派遣は都道府県によって例外の場合あり
変な話、またアルバイト生活に戻っても就職とみなされるのね。う~ん、なんだかなぁ。笑
また、職種についての縛りもありません。
例えば事務コースのカリキュラムを修了したとして、事務とは無関係な仕事に就いたとしても「就職」として数えられます。
訓練前にもともとやっていた仕事(前職)と同じ職種に戻っていく人も一定数居たなぁ。
職業訓練を受ければ、必ずしも希望職種に就職できるというわけでもないんですよね。
それでも、上の条件を満たせば就職者となるわけです。
「就職率」の計算から除外されるケース
ここで、就職率の計算から除外されるケースについても注目してみます。
以下の方は「就職」にも「未就職」にもカウントされません。
- 就職による中途退校者で、かつ「4ヶ月以上の就職」と「週20時間以上の勤務」を満たしていない方
- 自己都合で退校した方
- 訓練修了後、別の職業訓練に行く(又は行くことが決まっている)方
- 訓練中、あるいは訓練修了後の報告期限内に死亡した方
これらのケースに該当する方は、そもそも「クラスに居なかった人物」となり、就職率の計算対象にならないのです。
例えば、自己都合で退校した場合だと「未就職」としてカウントされそうだけど、計算自体されなくなってしまうのね。う~ん…。
訓練修了者は就職率の計算対象
逆にいえば、訓練を最後までやり切った「訓練修了者」は、よほど特殊な理由でなければ「就職率」の計算対象に含まれるということ。
例えば下記のような理由で就職できなかった場合でも、訓練修了者であれば「未就職」としてカウントされるんです。
- 妊娠
- 入院・療養
- 家族の看病
- 配偶者の仕事の都合による引越し
- 進学(別の職業訓練に行く場合を除く)
一見すると仕方ないような気もするけど、それでも「未就職」扱いになるのね。
これらの予定があるなら、修了前に退校してもらったほうが、訓練校側としては助かることもあるんだ。
あ!就職できないのに修了されちゃうと、就職率が下がっちゃうからってことね?
イエース。自己都合による中途退校なら「未就職者」としてカウントしなくていいから、就職率が下がるのを防げるんだよね。
ただし早すぎる退校だと、訓練校は逆に損になる場合も。
退校した後は、その訓練生の分の訓練委託費を受け取れなかったりするので。
上記のような理由で就職できないことが分かっている場合は、訓練最終月に自己都合で退校してもらうのが運営側としてはダメージが少ないかと。
注意
あくまでも訓練校側が助かるという話であり、退校を推奨するものではありません。訓練校や機構側とよく相談して決めるのがベストです。
職業訓練校が就職率をどうしても上げたい理由【裏事情】
たいていの職業訓練校は、就職率を上げる為に必死です。
なぜなら、就職率は訓練校側への利益に大きく関わってくるから。
職業訓練校が就職率を上げたい具体的な理由は下記のとおり。
- 就職支援費が支給される
- 開校申請時に有利になる
- 訓練校の実績に箔が付く
どれも売上に直結してくるようなものばかりです。
就職支援費が支給される
各クラスごとに就職率が一定の割合を超えると、訓練校側に就職支援費(報奨金のようなもの)が支給されます。
言ってみれば、ボーナスといったところです。笑
都道府県ごとに違いはありますが、たいていの場合
- クラスの8割以上が就職できれば満額支給
- クラスの6割以上が就職できれば半額支給
- クラスの就職者が6割に満たなければ支給なし
といった感じ。
一人あたりの金額が設定されていて、基準をクリアすれば
「一人あたりの金額 × クラスの人数」
ぶんの金額が支給されます。
これはかなり大きい。
上記の場合、5割の人が就職できれば5割分の就職支援費を貰えるかというと、そうではありません。
全く支給なしになるんです。
だから、学校側は必死。
開校申請時に有利になる
就職率が高いと、開校申請にも有利にはたらきます。
職業訓練の制度は各ジャンル・コースごとに開校できる「枠」があり、複数の訓練校がその「枠」を狙って、運営機構側につど開校申請する構図です。
今年はこのコースは○名。という風に枠が設定されてたりするんだよ。
運営機構は、学校側から提出された開校申請書類をもとに「どの学校に開校してもらうか」を精査。
設備面やカリキュラムの内容、これまでの実績(就職率や受講生の満足度など)を吟味して、競合を勝ち抜き適切だと判断された学校だけが開校できるんです。
この「開校の認定」に就職率がどれくらい関わるという明確な基準があるわけではありませんが、一般的には「就職率」も重要な評価要素だとされています。
学校側としては、訓練を行うため1コースにつき1フロアほど確保したうえで開校申請するので、もし申請が通らず「開校できない」となると、結構なダメージ。
例えば、6ヶ月のコースを申請して通らなかったら、その6ヶ月間1フロアが丸々「空き」状態になってしまうことも。フロアを臨機応変に有効活用できればいいんだけどね。
空き状態でも、家賃などの固定費はかかってくるのよね。小さい規模の学校だと死活問題…。
もちろん、開校できなければ運営費も支給されません。
学校側は、ライバルより実績(就職率)を上げようと日々しのぎを削っています。笑
訓練校の実績に箔が付く
就職率が高ければ、訓練校の実績に箔が付きます。
上記の話と似ていますが、ちょっと別のお話。
「具体的にいくら貰える」というわけではありませんが、就職率が高ければ、訓練を受けようか迷っている人へのアピールポイントになります。
職業訓練の窓口であるハローワークも、なるべく就職率を上げたいわけなので「この学校は就職率高いよ」などとすすめてもらえたりするんです。
受講生募集の宣伝用チラシにも「就職率○%!」とか書けるしね。笑
そういうの見たことあるかも!笑
就職率は、いわば訓練校のステータス。
ハローワークからの評価や、受講生募集にも影響してきます。
職業訓練校はどのように就職先を斡旋しているの?
「職業訓練校ではどのように就職先を斡旋してもらえるの?」
と、気になった方もいるのではないでしょうか。
実のところ、それほどトリッキーな斡旋をしているわけではありません。
基本的には、「一般的な”職探し”を促すだけ」というのが多いです。
求人情報貼り出し
例えば、求人誌やハローワークの求人情報を学校内に貼り出すなどなど。
事務系のコースであれば事務職募集のページが貼り出されます。
また、教室の至る所に求人誌が置かれているのも、よく見る光景です。笑
ネットで求人情報を検索
授業の中で、ネットの求人情報を検索する時間が設けられる場合も。
職業訓練では就職支援に関する授業があり、ネットでの仕事の探し方や履歴書・職務経歴書の書き方、面接対策などについて学べます。
その一環として、ネットで求人情報を探す時間があるんです。
職場見学や会社説明会をした企業への就職
また、就職支援の一環として他の会社へ職場見学に行ったり、逆に企業側が学校に来て会社説明を行うことがあります。
企業としては「良さげな人が居たら採用(勧誘)できるかも」というメリットが。
実際に、職場見学や会社説明会で接点を持ち、就職に至るケースも少なくありません。
自社採用
毎回あるわけではないですが、優秀な受講生は自社採用するというパターンもあります。
その場合、訓練修了が近くなると学校側の人間が勧誘してきます。笑
職業訓練を運営している会社は、同時に人材派遣事業を行っていることも多く、求人枠がある場合によく声が掛かります。
学校側からすると、就職率も上がるし人材も確保できるので一石二鳥というわけですね。
紹介【知り合いづて】
訓練校の、主に役員の知り合いの会社への就職を斡旋されることも。
経営者仲間がいて「そっちに良い人材いたら教えて」とお願いされているパターンです。笑
企業への営業
訓練校の職員が、企業側に営業をかけてくれていた所もありました。
「こういう受講生がいるので、採用を検討してほしい」という趣旨の営業です。
ただ、あくまで経験則ですが、ここまで手厚く就職を斡旋してくれる学校はごく一部しかありません。
基本的には「本人が”自分で”就職先を見つけてくれるだろう」というスタンスの学校が多い印象です。
良くない施策を行う訓練校も…
通常、訓練校側が就職率を上げる施策としては
- カリキュラムの質を上げる
- 修了後も就職支援を手厚くする
などの方法が思いつきますよね。
ですが、なかには望ましくない方法で無理やり就職率を上げようとする訓練校(または就職支援担当者)も一部見受けられます。
※近年はだいぶ減ってきている印象ではありますが。
強引な就職斡旋・圧力
例えば、半ば強引に就職先を斡旋されたり、厳しい言葉で責め立てられる場合も。
適当な会社に就職させて「はい就職~」といった感じです。
訓練生の意図を無視して、数字上の「就職率」ばかり上げようとしている担当者を何度も目の当たりにしてきたよ。
あぁ、一部のFラン大学とかがよくやるやつね。
こらこら。そりゃ知らないけれども。笑
とはいえ、強引な斡旋は訓練生からのクレームに繋がります。
クレームは学校にとって大きなマイナスポイントになるので、現在はそこまで悪質な所は少ないはず(と、思いたい)。
就職できなくても訓練生にペナルティは無い
ちなみに、就職報告期限内に就職できなかったとしても、訓練生に特別なペナルティがあるわけではありません。
(もちろん、就職に向けて努力はして欲しいですが。)
もし、訓練校から不当に圧力やペナルティを受けたと感じたら、運営機構やハローワークに事情を相談してみましょう。
大事なのは「意味のある就職」
就職・転職は人生の大きなターニングポイントでもありますよね。
- 希望の職種なのか?
- 長期的に安定できるか?
- 将来的なキャリアアップに繋がるか?
などなど、自分自身とじっくり向き合って臨みましょう。
まとめ【職業訓練「就職率」はどれくらい?就職先の斡旋方法は?訓練校の本音と裏事情もあわせて解説】
最後に、ここまでの内容をサクッとおさらい。
この記事のまとめ
- 職業訓練の就職率は主なもので6~7割程度。
- 職業訓練学校は就職率をめちゃんこ上げたい。
- 就職先は周りに流されずに自らの意志で選ぼう。
結局のところ「職業訓練を活かして就職できるか」というのは、本人の行動次第でもあります。
職業訓練の制度を余すことなく利用して、より良い就職に繋げていきましょう。
Good Luck!!