意味が分かると怖い!漫画「下校時刻の哲学的ゾンビ」の考察・感想

意味が分かると怖い!漫画「下校時刻の哲学的ゾンビ」の考察・感想

意味が分かると怖い!漫画「下校時刻の哲学的ゾンビ」の考察・感想

皆さんは、”哲学的ゾンビ”という言葉を聞いたことはありますか?
哲学的ゾンビは、人間と全く同じような動作・行動・振る舞いをし、外見も人間となんら変わりません。
ですが、それらの行動は私達人間のように内情から発動するものではなく、あくまでも「こういう状況ではこういう挙動をする」という機械的なものです。
ある種の”忠実にプログラミングされた行動”に近いものがあります。
ただし、哲学的ゾンビは一種の概念的なものであり、その存在が確認されているわけではありません。

哲学的ゾンビとは…

「哲学的ゾンビ」は、意識哲学における思考実験の一つです。以下のような特徴を持つ仮想的な存在を指します。

  1. 外見や行動は通常の人間と全く同じ
  2. 脳の機能や反応も通常の人間と同様
  3. しかし、主観的な意識体験や感覚質(クオリア)を一切持たない

つまり、哲学的ゾンビは外からは普通の人間と区別がつきませんが、内的な意識体験を全く持ちません。この概念は、意識の本質や物理主義(全ては物理法則で説明できるという考え)の妥当性について議論する際に用いられます。

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今から紹介するのは、そんな哲学的ゾンビが表現された漫画です。
タイトルは「下校時刻の哲学的ゾンビ」

まずは、以下のリンクから読んでみてほしいなと思います。
【漫画】下校時刻の哲学的ゾンビ

一見、何の変哲もない微笑ましい漫画にも見えますね。
ですが、実は意味が分かるとゾッとする、怖い漫画なのです。

ここから先はネタバレを含む考察となりますので、それでも知りたい方だけ読み進めてください…。

目次

漫画「下校時刻の哲学的ゾンビ」の考察

追記:
作者様本人の解説ありました。
「『下校時刻の哲学的ゾンビ』のセルフ解説」

さて、一見するとなんてことないこの漫画、よく見るとコマ割りが少し変わっています。
物語が進む真ん中の列に加えて、左右両側の列にもコマがありますね。
右の列に至っては、始めから最後まで全て真っ黒になっており、「これらのコマ意味ある?」と思った方もいるかもしれません。
では、これらのコマは何を表しているのでしょうか?
それぞれ以下のような視点であることが読み取れます。

真ん中の列:物語が進む場面。客観的な視点。
右側の列:メガネの女の子の視点・意識。
左側の列:ピンク髪の女の子の視点・意識。

まず注目したいのが、左列のコマ。
途中までは、通常どおりピンク髪の女の子の目線でコマが進んでいます。
しかし、”食べるとひっそり死ねるアメ”を食べたところから、コマが真っ黒になってしまいます。

食べる直前に目を閉じる→目を閉じたので(視界を塞いだので)真っ黒。
食べてから再び目を開ける→メガネの女の子の姿が見えているが、徐々に薄れていき真っ黒に。

つまり、この瞬間にピンク髪の女の子の自己意識はなくなり、ひっそりと死ぬことに成功したと捉えられます。
(ここで哲学的ゾンビになったということ)

その後も普通に「…なんともない」などの会話していますが、ここからは”それまでのピンク髪の女の子”ではなく、”ピンク髪の女の子の挙動・行動を忠実に模したロボット的な存在(哲学的ゾンビ)”が彼女に成り代わって会話をしているに過ぎないのです。

まさに「苦しむことなく、家族に心配かけることもなく死にたい」を実現したわけです。

メガネの女の子は既に…

そして、その後の会話
「ま 私も同類なんだけどね」
「きのう部活の先輩に同じ手口で騙されて笑われたの」

…ん?

はい、そうですね、勘の良い方は既に気付いたのではないでしょうか。
メガネの女の子は昨日時点でこのアメを口にしており、既に哲学的ゾンビになっていたことが推察されます。

右列の(全て真っ黒な)コマの意味

ここで右列のコマが重要になってきますね。
なぜ最初から最後まで真っ黒なコマ(一見すると無意味なコマ)をわざわざ描いたのか、その理由です。

右列のコマは、メガネの女の子視点での意識・自我を表しており、漫画に登場した時には既に哲学的ゾンビであったことが分かります。

人間社会に紛れる哲学的ゾンビ…(?)

物語の最後では、哲学的ゾンビ同士(笑)で普通の人間のように楽しく会話して帰るシーンが描かれています。
哲学的”ゾンビ”といえど、元の人間と全く同じ振る舞いを見せるため、人間社会に紛れていても見分けがつきませんね。

実はもう、この世のほとんどの人間が哲学的ゾンビなのでは?
あなたの身近にいるあの人、哲学的ゾンビでないと本当に言い切れますか?

そんな疑問を投げかけられたようなラストシーンですね。

以上が、「下校時刻の哲学的ゾンビ」を読んだ私の感想・考察です。

【漫画】下校時刻の哲学的ゾンビ

ちなみに、普通の人間と哲学的ゾンビを見分ける方法はないかとChatGPTに質問してみましたが、現状では見分ける方法はなさそうです…。
※クリックで画像拡大できます。

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哲学的ゾンビは架空の存在とされている

とはいえ、哲学的ゾンビはあくまでも架空の存在とされています。
この考えの発端はデカルトの二元論からきており、思考実験を行う際の想定上のものです。
哲学的ゾンビ関連の漫画などは、読み物として楽しむ程度が丁度良いですね。
ハマりすぎると、オカルトの世界から抜けられなくなるかもしれません。

自己意識を感じられるって幸せですね。
カツカレー食べたい。

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