こどもの日の意味・由来・祝い方|端午の節句との違いと”現代のかたち”
こどもの日は子どもの成長と幸福を願う祝日です。この記事では、端午の節句の由来からこどもの日の制定背景、現代の祝い方や地域イベントまでをわかりやすく解説します。
こどもの日の制定と概要
こどもの日は1948年(昭和23年)7月20日に公布・施行された「祝日法」により正式に国民の祝日として加えられました。
当初は「端午の節句」として男子の健やかな成長を願う行事でしたが、戦後の社会変化を背景に「こどもの日」として性別を問わず全ての子どもを祝う日へと改められています。毎年5月5日に定められ、家族そろって子どもたちの幸福を願う機会となっているのです。
端午節から端午の節句へ:中国伝来と日本文化
「端午の節句」は古代中国の端午節(Duanwu Festival)に端を発します。紀元前4世紀、楚の詩人・屈原(くつげん)が五月五日に汨羅江に身を投じた故事を悼み、人々は供物を川に投じたのが始まりとされます。
この習慣が「ちまき」を食べる風習へと発展し、やがて奈良・平安時代に日本へ伝来しました。中国の供養祭と日本の武家文化が融合し、独自に「端午の節句」として定着したのです。
参考1:端午の節句の由来 – 市立富士博物館 PDF
参考2:中国と日本の「端午節」– SciencePortal China
日本伝来と武家社会での展開
日本では奈良時代に端午の風習が伝わり、平安時代以降は宮中行事や貴族の雅な催しとして採用されました。
鎌倉・室町期には武家社会で兜飾りや武者人形の習慣が始まり、江戸時代には庶民にも広がって「柏餅」「ちまき」など庶民的な縁起物が定着しました。
地域や家柄によって飾りや食文化が多彩に発展し、今日まで続く端午の伝統を形成しています。
子どもの権利と現代の意義
戦後の子どもをめぐる社会状況を踏まえ、1951年(昭和26年)5月5日には「児童憲章」が制定されました。児童を「人として尊ばれる存在」と位置づけ、健康・教育・遊びの権利を宣言したものです。
また、5月5日から11日は「児童福祉週間」とされ、子どもの幸福を社会全体で考える期間となっています。さらに国連総会で11月20日が「世界こどもの日」と定められており、国際的な子どもの権利保護とも呼応しています。
こいのぼり・武者人形・兜飾りの意味
こいのぼりは滝をのぼる鯉が龍になる伝説にちなみ、「逆境を乗り越えて立身出世する」願いを込めた吹き流しです。一般に黒い真鯉が父、赤い緋鯉が母、青や緑の子鯉が子どもを表し、家族の絆を象徴します。
武者人形や兜飾りは武勇や守護を託し、家族の安全を祈願する伝統工芸です。近年はコンパクトなケース入りやモダンデザインも登場し、住環境に合わせた選択肢が増えています。
柏餅・ちまきの由来と食文化
柏餅は「新芽が出るまで古い葉が落ちない」柏の特性から子孫繁栄を願い、関東を中心に食べられます。一方、ちまきは屈原の故事に由来し、笹やアシの葉で包んだ餅菓子で邪気払いの意味を持ちます。
関西地域では柏餅よりも、ちまきを食す文化が主流であり、地方ごとの食習慣の違いもこどもの日の魅力の一つです。さらに、地域によってこしあん、粒あん、みそあんなどさまざまな味があり、和菓子協会などの団体情報にも多彩なバリエーションが紹介されています。
菖蒲湯の習慣と健康祈願
菖蒲湯は菖蒲(しょうぶ)の葉や根を湯に入れて入浴する風習で、解毒作用や邪気祓いの効能があるとされます。端午の節句の薬草行事として定着し、子どもの無病息災を願うと同時に家族のリラックス効果も生まれています。
昨今はアロマバスソルトや入浴剤との併用も見られ、伝統と現代の癒しが融合する入浴習慣となっています。
各地のこいのぼり祭り:地域特有のイベント
全国各地では定山渓温泉渓流鯉のぼり(札幌市)、竜神峡鯉のぼりまつり(茨城県常陸太田市)、かんな鯉のぼり祭り(群馬県多野郡神流町)など、数百~千匹規模の鯉のぼりイベントが開催されます。
大型吊り橋やダム湖畔に掲げられた姿は圧巻で、春の風物詩として多くの家族連れを楽しませています。
現代の家庭での祝い方と最新データ
日本マーケティングリサーチ機構の調査(2024年3月実施)によると、「こどもの日といえば何を想像しますか」という質問の回答として、「鯉のぼり」が51.70%、「五月人形(兜や鎧など)」は20.44%、「ちまきや柏餅」は16.93%という結果でした。
さらに、以下の集計結果も掲載されています。
去年のこどもの日は何をしましたか
出典:こどもの日に関する一般調査(日本マーケティングリサーチ機構)
飾り物(五日人形・こいのぼり) 15.95%
外食 16.58%
贈り物 10.77%
特に何もしていない 55.96%
その他 0.75%
外食や贈り物よりも伝統行事を重視する傾向が強い一方で、特に何もしない家庭も約56%に上ります。世代や家族構成による多様な祝い方が見られます。
海外の日本人家庭と国際的な子どもの日
海外在住の日本人家族も現地の五月を迎えてこいのぼりを揚げるなど、日本流の祝い方を継承しています。
また、UN(国際連合)が定める11月20日の「Universal Children’s Day(世界こどもの日)」は、1989年に採択された「子どもの権利条約」の記念日でもあり、児童憲章や子どもの権利の国際的な理解を深める日とされています。
日本のこどもの日とは日付や目的は異なるものの、どちらも子どもの尊厳と未来を祝うという点で強い親和性を持っています。
まとめ:伝統と社会の融合で未来へつなぐ
こどもの日にまつわる多彩な風習は、子どもたちの健やかな成長を願う家族の絆を象徴します。歴史的な起源や社会的意義を理解しつつ、現代の多様な家族形態や価値観を踏まえて楽しむことで、日本文化の豊かさを未来へつなげていきましょう。